
お疲れ様です。るかです。臨床検査技師で細胞検査士でもあります。
コロナのPCR検査をきっかけに「臨床検査技師」というワードがニュースでも取り上げられるようになりました。学生の皆さんはもちろん、社会人のみなさんも、医師、看護師、放射線技師は知っていても「臨床検査技師」って誰?って思っていませんか?
そこで今回は臨床検査技師である私が徹底解説していこうと思っています。
臨床検査技師になりたい人
臨床検査について知りたい人
医療職に興味のある人
臨床検査技師の他の記事はこちら
臨床検査技師の仕事内容

臨床検査技師ってなにをしているの?

ざっくりいうと検査のスペシャリストだよ!採血をして血液成分を調べたり、
心電図や脳波の検査などしているよ。

看護師さんが検査してると思ってたよ。
臨床検査技師は、検査をするスペシャリストです。「検体検査」と「生理機能検査」の分野に分かれます。
検体検査
人の体から採取した血液、尿、便、喀痰、胃や腸などの組織、細胞、遺伝子、体腔液を使って検査をします。採血や尿検査は皆さん一度は経験したことがあると思います。これらの検体を検査室で調べ、結果を報告しているのが臨床検査技師です。
検体検査も細かく分けると微生物学的検査、病理学的検査、生化学的検査、血液学的検査、免疫学的検査、一般検査、遺伝子学的検査 があります。
生理機能検査
心電図やエコー検査、視力聴力検査、筋電図検査など患者さんに直接関わって検査をします。クリニックでは看護師が検査していることが多いですが、総合病院では、基本的に臨床検査技師がこの仕事を担っています。

ざっくり説明しましたが何の検査かわからないと思うので、
検査室紹介に移りましょう!!
検査室紹介その1 採血室

採血室では、臨床検査技師と看護師が採血を行っています。採血ができるのは、医師、臨床検査技師、看護師、臨床工学技士です。
臨床検査技師が採血をするメリットは、採血量と採血管の種類を把握しているので、自分達で採血してそのまま検査をすることができるためです。
臨床検査技師が行う採血の内容は以下の通りです。
- 外来採血(静脈)
- 病棟採血(静脈)
- 耳朶採血(耳からの採血)
- 出血時間
- 50g.75g糖負荷試験
外来採血、病棟採血…臨床検査技師は静脈のみ、採血が許可されています。普段みなさんの腕から採血しているのは静脈です。病棟採血では、薬の影響で腕の血管が見えない方も多いので、足などの部位からも採血をします。小児の採血や新生児の採血は、医師や看護師が行うことが多いです。また、動脈からの採血は医師のみが行います。
耳朶採血…腕から血液が取れない患者さんに対して、項目が血糖値、HbA1cの場合には耳からの血液で検査をすることができます。耳からの採血は、小さな針で耳に傷をつけて、毛細管と呼ばれる細い筒に採血していきます。
出血時間…耳に小さな傷をつけて出血の止まり具合を見る検査です。主に手術前に検査をします。
50g or 75g糖負荷試験…rukaが妊娠糖尿病になった際に検査をしていますのでこちらの記事を参照してください!
検査室紹介その2 生理機能検査室

臨床検査技師が行う生理検査の内容は以下の通りです。
- 心電図検査
- 呼吸機能検査
- 脳波検査
- ABI(血液脈波検査)
- 誘発筋電図検査
- 心臓超音波検査
- 新生児聴覚スクリーニング検査
- 視力、聴力検査
- 眼底検査
- MRI(基本的には放射線科が多い)
- その他
生理機能検査は幅がとても広いですし、病院によって行なわれている検査は様々です。患者さんの体に触れて行う検査なので、1番臨床検査技師と関わる部署となっています。検査の内容が増えてきているので、生理機能検査の人員は多い傾向にあります。
心電図検査…胸と手足に電極をつけて、心臓が収縮する時に発生する電気信号を波形として記録する検査です。心筋梗塞や不整脈などの診断に有用です。
呼吸機能検査…肺機能の検査で、口に筒を加えた状態で呼吸をし、肺に出入りする空気の量や、肺の弾性力、気道の閉塞具合など、肺が正常かどうかを検査します。間質性肺炎、気管支喘息などの診断に有用です。
脳波検査…頭皮に電極をつけて、脳の活動を波形として記録する検査です。てんかん、脳炎、意識障害などに有用です。
ABI検査…手足に血圧計を巻いて、足首と上腕の血圧の比を測る検査です。健常者では、上腕の血圧よりも足首の血圧の方が高いですが、下肢血管の動脈に狭窄や閉塞があると、その部分の血流が悪くなるので、血圧も低くなります。上腕と足首の比を見ることで、血管の詰まり具合がわかります。
誘発筋電図検査…末梢神経を電気的に興奮させて、その反応を筋肉や神経から記録したもので、末梢神経の機能検査です。手根管症候群、糖尿病、ギランバレー症候群などさまざまな神経の病気に有用です。
超音波検査…エコー検査とも言います。体の表面に超音波プローブと呼ばれる器械を当て、臓器から跳ね返ってくる超音波を画像として映し出す検査です。放射線を使わないので、妊娠中の胎児のエコーなどでも使われます。癌、胆石、胸水腹水、リンパ節の肥大、大動脈瘤、心肥大など、さまざまな病気に有用です。
新生児聴覚スクリーニング検査…早期に赤ちゃんの難聴がないかを調べる検査です。OAE検査と自動ABR検査があり、OAE検査では、音に反応して内耳から返ってくる反響音を検査します。自動ABR検査では、小さい音をイヤホンから聴かせて、脳からの電気信号を皮膚表面の電極にて検出します。
視力聴力検査…視力と聴力の検査です。視力は片目ずつどれくらい見えるかの検査をし、聴力検査は、イヤホンをつけて機械から出る音を聞き取れるかを検査します。
眼底検査…眼底鏡や眼底カメラを用いて眼球の奥にある血管・網膜・視神経を調べる検査です。糖尿病性網膜症などに有用です。
MRI検査…強力や磁力と電波を使って、磁場を発生して行います。閉所で行うため、閉所恐怖症の方には検査が難しいこともあります。がんの有無や転移がないかを調べたりするのに有用です。
検査室紹介その3 検体検査室

検体検査は7つの分野に分かれています。
- 生化学検査
- 免疫検査
- 血液検査
- 一般検査
- 輸血検査
- 微生物検査
- 病理検査
しかし、微生物検査と、病理検査は採血した検体ではなく少し専門的な分野になるので、別枠でお話しさせてください。
生化学検査…生化と呼ばれ、カルシウムやタンパク、尿酸やコレステロール、電解質など体内の成分を調べます。1日に数回、機械のメンテナンスとコントロール測定を行い、正確な値が出るように日々努力をしています。メンテナンスとコントロールを怠ると、誤診につながるデータを作り出してしまう可能性がある為、毎日欠かせません。
また、血糖測定器の貸し出しを行っているので、糖尿病の患者さんは検査技師と関わりが多いかもしれません。
免疫検査…C型肝炎、コロナのPCR検査、自己抗体検査、肝炎・梅毒などの感染症検査、細胞が癌化すると血液中に現れる特殊な蛋白質の検査(腫瘍マーカー)、ホルモン検査等を行います。
迅速検査では、インフルエンザ、アデノウイルス、ノロウイルス、妊娠検査等行います。
PCR検査に関しては、遺伝子検査室がある病院は遺伝子検査担当者が行っています。
血液検査…血算、血液像の検査では、赤血球、白血球、血小板の量や大きさ、分画などを調べます。※分画は、顕微鏡下で血液を見て、好中球、単球、リンパ球、好酸球、好塩基球に分類分けをすることです。また、医師が骨髄穿刺をする時に、血液像を引く手伝いをします。
凝固検査では、血液がどのくらいで止まるかを調べます。
一般検査…尿や便の検査をします。尿から糖が出ていないか、タンパクや潜血がないかなど機械で簡易検査をして、その後、顕微鏡で沈殿物(細菌、赤血球、白血球、上皮細胞)を目視します。髄液検査では、髄液中の成分を数えます。病院によっては、精液検査や腹水の検査なども行います。便検査では便中に潜血がないかを検査します。
輸血検査…血液型、クロスマッチ、不規則抗体検査を行います。輸血を投与することが出来るのは看護師ですが、製剤と患者の血液を検査して、その人に合った血液を輸血できるように準備するのが臨床検査技師です。
もしA型の人にB型を入れてしまったらその人は死んでしまいます。そうならないために、何度も輸血を入れるまでにダブルチェックをしています。
もちろん同じA型でも他人の血液を入れるので、副作用が起きることはありますが、出来るだけ最小限にするために検査をしっかりすることが大事です。緊急輸血などの時も私たち臨床検査技師が急いで準備しなくては患者は助かりません。とても大変な部署の一つです。
検体検査室は、裏方で一般の患者さんが部屋に入ってくることはありません。患者さんのデータがたくさんあるので立ち入り禁止なことが多いです。
検査室紹介その4 微生物検査室

微生物検査は患者さんの喀痰や、便、尿、創部などあらゆるものを滅菌した容器に採取して提出してもらい、そこから何の菌が出るか検査します。結核の検査も微生物検査室で行ってます。
滅菌容器に採取してもらうのは、滅菌した容器ならその患者さんからとった菌以外のものが混ざらないからです。この結果から、飲ませる薬を決めたり、何の菌が悪さをしているのか分かります。培養検査の他にPCR検査、血液培養検査を行なっています。微生物検査室の人は、外に菌を持ち出さない、そして持ち込まないように徹底していてすごいなと思います。
検査室紹介その5 病理検査室

病理検査は、病理医と共に働く部署です。病理検査では内視鏡や手術でとってきた材料で検査します。外科医の先生が手術で採取した手術材料が、ホルマリンに浸かっているので、それを臨床検査技師が水で一度洗い流し、臓器の写真を撮ります。
その後、病理医が見たい部分を切り出してくれるので、それをカセットと呼ばれる小さな網目状の穴のある入れ物に詰めてから、さらにホルマリンにつけて腐らないように1晩固定させます。
翌日にパラフィンと呼ばれるロウソクのロウみたいなもので固めます。ミクロトームという機械を使って4μmに薄く切り(機械で…と言っても自動ではないので、検査技師の技量が求められます)、染色し、病理医に提出します。切る厚さや粘膜が見える見えないで結果が変わってしまうので、作るのが大変です。染色を間違うと染まるものが染まらなくなります。診断は病理医が行うので病理医がいかに診断しやすいかを考えて標本を作ります。
細胞検査士になれば、採取した細胞を染色し、自分で診断をつけることができます。悪性のものは病理医の確認が必須ですが、診断に関わることができる魅力がありますね。
細胞診は胸水や腹水、尿、便、婦人科の擦過細胞、喀痰などを採取し検査します。患者の負担が少なく癌細胞を見つけることができるので内視鏡検査の時や手術の前、婦人科検診などで行うことが多いです。
試験は難しく、合格率は25%程です。私は細胞検査士になるまでに5年もかかりました…
他には、解剖の補助、がん遺伝子の検査、電子顕微鏡という顕微鏡で、腎臓の糸球体などの検査をします。皆さんが学生の時にのぞく顕微鏡は光学顕微鏡といいます。
病理検査は外科、内科、病理医など先生方との関わりが多い部署ですが、患者と会うことはまずありません。
検査室紹介その6 遺伝子検査室

遺伝子検査室は、遺伝子検査や染色体検査を行なっています。DNAの配列、がん遺伝子の解析、コロナウイルス、HCVのPCR検査など、遺伝子に特化した検査室です。
PCR検査に携わる人は、遺伝子検査、微生物検査、免疫検査室にいる技師のうちの何人かや、遺伝子検査室の人間のみなので、精鋭部隊だということがわかります。ちなみに私はこの部署にはいたことがないので、できません…。
まとめ
検査技師は、採血と生理機能検査に携わる人以外、ほとんど患者さんと顔を合わせることなく1日を過ごしています。完全に裏方です。
検査技師に院内で会っても、検査技師とは分からず「看護師さん」と呼ばれるのも無理ないと思いますし、そもそも院内で見かけても同じような服装なので、歩いてるだけじゃわかりませんよね。
臨床検査技師のことが少しでも理解できて、これから臨床検査技師になりたいなと思う人が少しでも増えたら嬉しいです。
また、臨床検査技師という職業が一般の方にも知れ渡るといいなと思います。
ご覧いただきありがとうございました
コメント